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私学法会計監査報告の内容

<学校法人会計基準の一部を改正する省令案> 

 先月29日(2024年7月)、「学校法人会計基準の一部を改正する省令案等のパブリックコメント(意見公募手続)の実施について」が公表されました。学校法人会計基準そのものは日本公認会計士協会でも意見提出予定ですし、まだ未確定ですので解説等はまだ差し控えますが、多くの方から以下の質問をいただいていますので、その論点だけ解説しておこうと思います。 

「(1)学校法人会計基準の一部を改正する省令案」の26~27ページ、 (私立学校法施行規則の一部改正)で、施行規則第34条に第4号が挿入追加されているが、この内容はどういう意味か? 

 私立学校法において令和7年度より会計監査人制度を導入されますが、その会計監査人の監査にについて、先日(令和6年6月14日文部科学省令第21号)、施行規則第5章第3節で定められました。そのうち、第34条では「会計監査報告の内容」が以下のように定められています。 

会計監査人は、計算関係書類を受領したときは、次に掲げる事項を内容とする会計監査報告を作成しなければならない。 

一 会計監査人の監査の方法及びその内容 

二 計算関係書類が当該学校法人の財産及び収支の状況を全ての重要な点において適正に表示しているかどうかについての意見があるときは、次のイからハまでに掲げる意見の区分に応じ、当該イからハまでに定める事項 

イ 無限定適正意見監査の対象となつた計算関係書類が一般に公正妥当と認められる学校法人会計の慣行に準拠して、当該計算関係書類に係る期間の財産及び収支の状況を全ての重要な点において適正に表示していると認められる旨 

ロ 除外事項を付した限定付適正意見監査の対象となつた計算関係書類が除外事項を除き一般に公正妥当と認められる学校法人会計の慣行に準拠して、当該計算関係書類に係る期間の財産及び収支の状況を全ての重要な点において適正に表示していると認められる旨、除外事項並びに除外事項を付した限定付適正意見とした理由 

ハ 不適正意見監査の対象となつた計算関係書類が不適正である旨及びその理由 

三 前号の意見がないときは、その旨及びその理由 

四 追記情報 

五会計監査報告を作成した日 

<その他の記載内容> 

これに対して7月29日の省令案で掲載された私立学校法施行規則の一部改正では、第3項の次に以下が加えられたのです。 

四 第二号の意見があるときは、事業報告書及びその附属明細書並びに財産目録(第二十四条に規定する貸借対照表に対応する項目を除く。)の内容と計算関係書類の内容又は会計監査人が監査の過程で得た知識との間の重要な相違等について、報告すべき事項の有無及び報告すべき事項があるときはその内容 

これは、監査報告書における「その他の記載内容」と呼ばれるものについて規定したものです。 

「その他の記載内容」 

項目 その内容、範囲 
その他の記載内容 監査した財務諸表を含む開示書類のうち当該財務諸表と監査報告書とを除いた部分の記載内容をいう。その他の記載内容は、通常、財務諸表及びその監査報告書を除く、企業の年次報告書に含まれる財務情報及び非財務情報である。 
年次報告書 法令等又は慣行により経営者が通常年次で作成する単一又は複数の文書であり、企業の事業並びに財務諸表に記載されている経営成績及び財政状態に関する情報を所有者(又は類似の利害関係者)に提供することを目的としているものをいう。年次報告書には、財務諸表及びその監査報告書が含まれているか、又は添付されており、通常、企業の動向、将来の見通し、リスク及び不確実性に関する情報並びに企業のガバナンスに関する情報が含まれる。 

<監基報 720 第 11 項より> 

 現行の私立学校振興助成法監査の監査報告書でも「「その他の記載内容」」の項目があります。 

その他の記載内容 

その他の記載内容は、×年×月×日付け○○○告示第××号に基づく貸借対照表、収支計算書、その他財務計算に関する書類に含まれる情報のうち、計算書類及びその監査報告書以外の情報である。理事者の責任は、その他の記載内容を作成し開示することにある。また、監事の責任は、その他の記載内容の報告プロセスの整備及び運用における理事の業務執行の状況を監視することにある。 

 私たちの計算書類に対する監査意見の対象にはその他の記載内容は含まれておらず、私たちはその他の記載内容に対して意見を表明するものではない。 

 計算書類の監査における私たちの責任は、その他の記載内容を通読し、通読の過程において、その他の記載内容と計算書類又は私たちが監査の過程で得た知識との間に重要な相違があるかどうか検討すること、また、そのような重要な相違以外にその他の記載内容に重要な誤りの兆候があるかどうか注意を払うことにある。 

 私たちは、実施した作業に基づき、その他の記載内容に重要な誤りがあると判断した場合には、その事実を報告することが求められている。

 その他の記載内容に関して、私たちが報告すべき事項はない。 

 ただし、これまでの助成法監査においては、「年次報告書」とは、所轄庁の通知によって、所轄庁に提出される計算書類として一式で編綴された書類が該当する(実務指針第 36 号第 26 項)と解釈されています。そのため、現行の私学助成法監査では、事業報告書や財産目録等はその他の記載内容には該当しないと考えられています。 

現行助成法監査における「その他の記載内容」の具体的範囲は以下とされています。 

種別 その他の記載内容の範囲(作成していないものを除く。) 
文部科学大臣所轄学校法人 ・資金収支内訳表 
・活動区分資金収支計算書
 ・事業活動収支内訳表
 ・基本金の組入れに係る計画集計表、基本金の組入れに係る計画表 
知事所轄学校法人 各都道府県の監査事項に従い判断。 
注意点については巻末スライド参照 

<監査人は事業報告書もみることに> 

 令和7年度から開始される私立学校法に基づく会計監査人の監査では、あくまでも現時点での判断ですが、以下のようになると考えられます。 

学校法人が作成する書類 私立学校法に基づく会計監査人の監査 
計算書類 
貸借対照表 
事業活動収支計算書 
資金収支計算書 
 活動区分資金収支計算書 
監査対象 
計算書類の附属明細書
  固定資産明細書 
  借入金明細書
  基本金明細書 
財産目録 貸借対照表に対応する項目⇒監査対象 
上記以外の項目⇒その他の記載内容 
事業報告書及び附属明細書 その他の記載内容 

 つまり、現行助成法とは異なり、 

①財産目録(貸借対照表に対応する項目に限る。)が監査対象になる 

②会計監査人は、財産目録(貸借対照表に対応する項目を除く。)、事業報告書及びその附属明細書について、計算関係書類の内容又は会計監査人が監査の過程で得た知識との間の重要な相違等がないかどうかのチェックを行うことになる。 

ということです。 

  そうなると、事業報告書(案)についても会計監査人の監査報告前には作成していただき、会計監査人に提示していただく必要があります。また、会計監査人(公認会計士または監査法人)にとっては、財産目録や事業報告書をチェックしなければならないのですから、従来の助成法監査よりも監査の工数が増加することになります。従って監査報酬についてもその分が上乗せされてくるだろうと考えられます。 

以上については 

・私立学校法に基づく会計監査人の監査に関するものです。 

・2024年(令和6年)8月1日時点の公表資料等に基づいた解説です。その後当該施行規則の条項等が変更された場合は、この限りではないことにご留意ください。 



<現行助成法監査における知事所轄学校法人の「その他の記載内容」の範囲の注意点> グラフィカル ユーザー インターフェイス, テキスト, アプリケーション, メール

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