有価証券の評価換え(実務指針)2/1
有価証券の評価換え(実務指針)2/2
の続きの記事です。
上記記事をあわせて読むことにより理解が深まります。
本編
有価証券の評価換えについて
1.具体的な処理の明確化
第8号通知では「有価証券の評価換え」の項目が盛り込まれ、処理を明確化
2.「市場価格がある場合」と「市場価格のない債券等」の評価
(1)付すべき時価
「時価」とは、何か(通知では表のように規定されているが、実務指針Q4-2では、より詳細に以下のように解説)
A)株式
市場価格を時価として、以下の優先順位で付す
①市場において公表されている取引価格の終値
②終値がなければ気配値
③当日の終値も気配値も公表されていない場合は、同日前直近において公表された終値又は気配値
なお、ブローカーの店頭及びシステム上において取引されている株式については、そこで成立している売買価格又は気配値を付す
B)債券又は証券投資信託
市場価格がある場合は、株式の取引価格に準じた終値又は気配値。
市場価格がない場合には、合理的に算定された価額が得られればその価額。この合理的に算定された価額については、取扱金融機関等(証券会社、ブローカー、情報ベンダーを含む)に問合せすることも考えられる。
会計年度末の時価は、原則として会計年度末の市場価格に基づいて算定された価額。ただし、継続して適用することを条件として、会計年度末前1か月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いることもできる。
①50%以上下落の場合 ⇒ (3)
②下落率は50%未満だが30%以上の場合 ⇒ (4)
③下落率が30%未満の場合
一般的には「著しく低くなった場合」に該当しない⇒取得価額のまま
(3)50%以上下落した場合
・50%以上下落した場合には、「著しく低くなった場合」に該当
⇒特に合理的と認められる理由が示されない限り、時価が取得価額まで回復が可能とは認めないものとする。
・「特に合理的と認められる理由」とは
⇒「時価が取得価額まで回復する見込みがあることを合理的な根拠をもって予測できる程度の理由」実務指針Q4-4
・しかし、1年後の時価を予測することは通常不可能
⇒「理由」として認められるのは、「計算書類の理事会承認日までの間に、時価が取得価額まで回復している場合」のように、回復の事実が明らかな事象に基づいている場合に限られる
・このような「理由」が認められなければ時価を付す
・「著しく低くなったと判断するための合理的な基準を設けて判断」する
⇒個々の学校法人においてそれぞれ設ける
⇒具体的に、どのような場合に「著しく低くなった」と判断するのかを明確にしておくことが必要
・恣意性を排除するために、「合理的な基準」については文書をもって設定しておき、毎期継続的に適用することが必要
実務指針では、基準の具体的な文案は示していない
(例示指標)
株式については
①株価の推移、
②株式の発行会社の財政状態、
③株式の発行会社の経営成績の推移、
債券については
①格付け機関による格付け
②債券の発行会社の財政状態
③債券の発行会社の経営成績の推移
(例)
1.時価のある株式については下記のいずれかに該当する場合、「著しく低くなった」と判断し、合理的な理由がない限り時価をもって評価する。
①過去2年間にわたり継続して××%以上下落した状態にある場合
②……
③……
2.債券については……
①……
・この「合理的な基準」については、通知や実務指針では注記までは求められていない。
・結果として、各学校法人の「基準」に基づいて著しく低くなったと判断された場合は、時価を付す。
3.市場価格のない株式の評価
(1) 市場価格のない株式の時価
・市場価格のない株式の実質価額は、「一般に公正妥当と認められた企業会計の基準に従い作成された財務諸表を基礎とした1株当たりの純資産額」。これを時価とみなす。
・発行会社の保有する資産等を時価評価して算定することが可能な場合
発行会社の財務諸表において資産等の時価評価が行われていない場合は、発行会社の土地の含み損益等、時価評価のための資料が合理的に入手可能であれば、これを考慮して実質価額を算定することができる。
(2)50%以上下落した場合
・市場価格のない株式については、当該株式の発行会社の実質価額が、取得価額に比べて 50%以上下落した場合には、十分な証拠によって裏付けられない限り、その回復が可能とは認めないものとする
・「十分な証拠」とは
⇒例えば学校法人からの出資割合が2分の1以上の出資先会社等であって、事業計画等を入手して回復可能性を判定することが可能な場合。
⇒この場合、回復することが合理的に裏付けられるのであれば、「十分な証拠」と考えることができ、取得価額のままとすることも認められる。
⇒ただし、事業計画等は実行可能で合理的なものでなければならず、その回復可能性の判断は毎期見直すことが必要、その後の実績が事業計画等を下回った場合など、事業計画等に基づく業績回復が予定どおり進まないことが判明したときは、その期末において相当の減額をするか否かについて検討しなければならない。
・「十分な証拠」によって回復可能性が裏付けられない限り、時価を付すことになる。
4.その他
(1)外貨建て有価証券の評価換え
外貨建て有価証券の場合
・取得価額と時価との比較は外貨ベース
・貸借対照表価額は決算時の為替相場により円換算した額
(2)収支計算書の表示
・有価証券の評価換えによる損失額
⇒経常的な事業活動を通じて発生する性格のものではない。
⇒時価の著しい下落という特殊な要因によって一時的に発生した臨時的な資産価額の強制的引下げであって、資産の処分に伴う損失額に準ずる性格のもの。
(第8号通知)資産処分差額は事業活動収支計算書の特別収支に含まれる
大科目「資産処分差額」、小科目「有価証券評価差額」と表示
引当特定資産に含まれる有価証券について評価換えによる損失が生じた場合
一般の有価証券の評価差額とは区分して表示
学校法人委員会研究報告第29号 有価証券の会計処理等に関するQ&A 有価証券の評価等について (最終改正 平成26年7月29日)
Q10 仕組債の時価が取得価額に対して50%以上下落している場合は評価換えすべきですか。
(新 設)
A いわゆる仕組債とは、債券にデリバティブが組み込まれた複合金融商品であり、複合金融商品全体の時価を把握することができることから、債券に準じて実務指針第45 号4-3に従うこととなり、これによれば「時価が取得価額に比べて50%以上下落した場合には「著しく低くなった場合」に該当すると判断すべきである」とされている。
この場合は回復が可能と認められるときを除き評価換えをすることになる。
Q11 仕組債を保有しており、証券会社から入手した時価によれば取得価額から40%下落しています。当学校法人では30 から50%下落の場合の評価換えの基準を設けていないため、本件についてデリバティブの時価情報の注記のみにとどめようと考えていますが、よいですか。(新 設)
A 仕組債はQ10 にあるように債券に準じて取り扱う。下落率が30%以上50%未満の場合には、実務指針第45 号4-5に従い、各学校法人において著しく低くなったと判断するための合理的な基準を設けて判断することが必要であり、かつ恣意性を排除するための「合理的な基準」については文書をもって設定しておき、毎期継続的に適用することが必要となる。
したがって、まず第一に、下落率が30%以上50%未満の場合の評価換えの基準を文書として設定することが必要であり、次にこれを元に評価換えをすべきかを判断することとなる。
Q12 保有している投資信託について特別配当を受けました。これはどのように処理することになりますか。(新 設)
A 投資信託の特別分配金は、多くの場合、投資信託元本の払戻しとしての性格を有している。
元本の払戻しとしての性格を有している特別分配金であれば、貸借対照表上は「有価証券」を減額させ、資金収支計算書上は大科目「資産売却収入」の区分に小科目「投資信託特別分配金収入」等の科目を設けて表示することとなる。
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