朝日新聞デジタル版の2023年3月18日付に「鳥取大が付属学校の教職員手当6千万円分を追加支給 労基署指摘受け」という記事が掲載されました。
概要は、以下の通りです。
国立大学法人鳥取大学が付属の幼稚園、小学校、中学校、特別支援学校、事務部の教職員計68人に、総額約6千万円の不足割増賃金を3月分の給与で是正し、支給した。
この支給は、2022年10月に鳥取労働基準監督署の立ち入り調査を受け、2021年10月~2022年9月の勤務について、超過勤務・休日勤務手当の不足の是正勧告を受けて支給したもの。大学は、教職員が時間外に自己研鑽や授業準備などをした際、月給の4%分を上乗せする独自の「付属学校教員特別手当」を払ってきた。だが労基署は、公立学校の教員は「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)により、時間外手当ではなく月給4%分が一律支給されるが、国立大学付属学校の教員は非公務員で、給特法は適用されない、労働基準法上の労使協定(36協定)に基づく時間外手当を適用するべきだと指摘したという。
皆さんの学校ではいかがでしょうか。
学校法人の場合、上記の給特法を援用し「教員手当」等の名称で基本給等の4%を固定残業代のように支給している給与規程をみかけます。しかし、鳥取大学のケースと同様に私立学校には給特法は適用されませんから労働基準法に従い残業代を支給する必要があります。労働基準法に従い計算された残業代が常にこの「教員手当」を下回っていれば問題は生じないのですが、実際には上回るケースが多いと考えられます。
こうした中で、東京では労働基準監督署が学校法人に立ち入り調査を行ない、この残業代問題を指摘するケースを5~6年ぐらい前からよく耳にするようになりました。調査の内容やその後の結果は様々ですが、教員のパソコンのログで勤務時間を推定しかなりの金額の支給漏れの指摘と是正勧告を受けた学校法人もあったようです。一方で、出勤簿に押印をしている学校法人では「今後タイムカードによる記録等の客観的な方法で労働時間の状況を把握する」よう指導を受けたが支給漏れの指摘はなかったケースもあります。
いずれにしろ適正に労働時間を把握し労働基準法に従った時間外手当の支給を行なう必要があります。また、仮に過去分の支給不足となった場合には、その処理をどうするかは、複雑な問題となります。特に是正勧告の前年までに退職した方がいらっしゃると、税務的な問題(所得税)や社会保険料の問題も検討せざるを得ず、複雑となります。学校法人会計上の会計処理については、その支給の考え方によって整理することになると考えられます。
この記事へのコメントはありません。